Interviewee 神戸大学医学部附属病院病理部・病理診断科(教授) 伊藤 智雄
職歴
1996年 釧路労災病院
1998年 北海道大学医学部分子細胞病理(助手)
1999年 北海道大学医学部附属病院病理部(助手)
2000年 香港Queen Elizabeth Hospital留学
2001年 北海道大学医学部附属病院病理部(講師・副部長)
2008年 神戸大学医学部附属病院病理部・病理診断科(特命教授)
2012年 神戸大学医学部附属病院病理部・病理診断科(教授)
<所属学会>
日本病理学会(理事・評議員)
日本臨床細胞学会
日本デジタルパソロジー研究会(役員・幹事)
日本リンパ網内系学会
等
Interviewer 神戸大学医学部附属病院 病理診断科 専攻医 中島 智史
職歴
2022年3月 神戸大学医学部医学科 卒業
2022年4月 神戸大学医学部附属病院 初期臨床研修医
2024年4月 神戸大学医学部附属病院 病理診断科 専攻医

病理診断科の仕事について教えて下さい。

大きく分けて、組織診断、細胞診断、病理解剖の3つがあります。
1.組織診断では、手術で取り出された検体や生検組織を顕微鏡で組織構築から診断しています。時には免疫組織化学的手法、分子病理学的手法なども併用します。術中迅速診断は、手術中に凍結標本から緊急の組織診断を行い、外科医に手術方針の決定やリンパ節郭清範囲を決める重要な情報を提供します。
2.細胞診断では、ブラシや注射針などで採取した細胞をみて、異常がないかを調べます。細胞検査士がスクリーニングを行い、異常が疑われる場合には、病理医と一緒に診断をするようにしています。
3.病理解剖は、不幸にして病院で亡くなられた故人の体を解剖して、主には死因を調べます。他にも、生前の治療の妥当性や病変の広がりなども調べます。
一般的な病理医の一日の仕事の流れとしては、午前中に手術材料の切り出しを行って、午後から生検や前日までに切り出しを行った手術標本の組織診断をします。当番日によっては、その合間に術中迅速診断を行ったり、病理解剖を受けたりします。あと、臨床医からの診断に関する問い合わせへの対応やカンファレンスでの病理所見の提示、ディスカッションすることも病理医の重要な仕事になります。現在では、ほとんどの施設で夜間に病理解剖を行うことはなくなったので、当直や夜間のオンコール待機はありません。
1.組織診断では、手術で取り出された検体や生検組織を顕微鏡で組織構築から診断しています。時には免疫組織化学的手法、分子病理学的手法なども併用します。術中迅速診断は、手術中に凍結標本から緊急の組織診断を行い、外科医に手術方針の決定やリンパ節郭清範囲を決める重要な情報を提供します。
2.細胞診断では、ブラシや注射針などで採取した細胞をみて、異常がないかを調べます。細胞検査士がスクリーニングを行い、異常が疑われる場合には、病理医と一緒に診断をするようにしています。
3.病理解剖は、不幸にして病院で亡くなられた故人の体を解剖して、主には死因を調べます。他にも、生前の治療の妥当性や病変の広がりなども調べます。
一般的な病理医の一日の仕事の流れとしては、午前中に手術材料の切り出しを行って、午後から生検や前日までに切り出しを行った手術標本の組織診断をします。当番日によっては、その合間に術中迅速診断を行ったり、病理解剖を受けたりします。あと、臨床医からの診断に関する問い合わせへの対応やカンファレンスでの病理所見の提示、ディスカッションすることも病理医の重要な仕事になります。現在では、ほとんどの施設で夜間に病理解剖を行うことはなくなったので、当直や夜間のオンコール待機はありません。

神戸大学病理診断科はどんなところですか?

若手の医師や技師が多く、活気に満ちた環境です。みんなで切磋琢磨しながら診断技術を磨いています。若手が多いですが、科内にはリンパ腫や呼吸器、腎、婦人科などの専門家が在籍しています。また、近隣には骨軟部、脳、乳腺などの専門家もいて、ほぼあらゆる領域で高度な診断を行える診断・教育環境が整っています。
また、女性病理医や子育て世代の病理医が多く、急な家庭の事情にも理解があります。男性医師の育児休暇の取得も進んできており、若い医師にも働きやすい環境が整ってきています。
また、女性病理医や子育て世代の病理医が多く、急な家庭の事情にも理解があります。男性医師の育児休暇の取得も進んできており、若い医師にも働きやすい環境が整ってきています。

専攻医以降のキャリアプランはどのようなものですか?

専門医取得まで最短で3年かかりますが、その間に神戸大学病院以外の連携病院病理診断科での勤務も経験できます。プログラムの目標は、第一に病理医として必要な全分野の基礎的診断学の習得と、第二次目標としてサブスペシャリティーとして高度な診断学や分子病理診断学の習得です。専門研修中に大学院に入学することや、専門医取得後に学位取得を目指すことも可能です。専攻医の先生方それぞれの希望に添えるような様々なプログラムが用意されているので、詳細については神戸大学医学部附属病院病理専門研修プログラムを参照ください(https://www.pathology.or.jp/senmoni/515kobedai2024.pdf)。病理専門医取得後は、病理診断医として細胞診専門医や分子病理専門医の取得や研究を行うことも可能です。

思い出深い症例はありますか?

20年間診断の付いていない顔の変形を示す若い女性の症例がありました。顔の脂肪織が切除され、組織学的には成熟した筋と脂肪の混在した過誤腫様の組織で違和感があり、全体像を把握しようと電子カルテで画像を確認しました。顔の3DCTにて、片側の骨変形があり、電撃のように診断がひらめきました。いろいろな科の受診歴がありましたが、すべて確認し、1つの診断に収束しました。Proteus症候群という珍しい疾患です。報告したところ、放射線科から「10年来の謎が解決しました。ありがとうございました!」とお礼の電話がかかってきました。病理診断は総合診断であることを示す良い例と思います。

学生・研修医にメッセージをお願いします。

AIが台頭してきていますが、病理診断はあくまでも総合診断であり、HE染色の診断だけではありません。総合診断医です。日々診断学は進歩しており、分子病理学的知見なども次々導入されています。あらゆるフィールドを学ぶ機会もあり、総合的な知識とともにサブスペシャリティーを深めることもできます。落ち着いた環境で過ごすこともでき、フレキシビリティにも富んでいます。是非一緒に勉強しましょう。