第50回 緩和支持治療科

2023.05.01|診療科

Interviewee 山口 崇 神戸大学医学部附属病院 緩和支持治療科 特命教授

 

職歴

2004/4/1   手稲渓仁会病院 臨床研修医
2006/4/1   手稲渓仁会病院 総合内科
2008/4/1   筑波メディカルセンター病院 総合診療科・緩和医療科
2010/4/1   手稲渓仁会病院 総合内科・感染症科・緩和ケアチーム
2013/10/1    神戸大学医学部附属病院 緩和支持治療科
2017/4/1   兵庫県立加古川医療センター 緩和ケア内科
2018/4/1   甲南医療センター 緩和ケア内科
2021/10/1    神戸大学医学部附属病院 緩和支持治療科
2022/4/1   神戸大学医学部附属病院 緩和支持治療科 特命教授

Interviewer 原納 遥 神戸大学医学部附属病院 緩和支持治療科

職歴

2016/4/1   佐久総合病院 研修医
2018/4/1   飯塚病院 総合診療科 専攻医
2021/4/1   飯塚病院 連携医療・緩和ケア科 医長代理
2022/4/1   公益財団法人甲南会甲南医療センター 緩和ケア内科
2023/4/1   神戸大学医学部附属病院 緩和支持治療科

代替文字
原納先生
神戸大学の緩和支持治療科ってどんなところですか?
 
代替文字
山口先生
緩和ケアは、主に重篤な疾患を罹患している患者さんとその家族のQOLの維持・向上を目的としています。医学的なアプローチのみならず、非薬物的な対応やケアも駆使して患者さん・ご家族の治療・療養をサポートします。「緩和ケア=終末期」とのイメージをいまだに持たれている場合も多いですが、神戸大学病院の緩和支持治療科(緩和ケアチーム)が関わるのは各種疾患に対する治療中の患者さんの場合が多く、病気に伴う症状の緩和、治療の有害事象への対応、心理的なサポート、意思決定支援や療養調整など、対応する内容は多岐にわたります。これらを、主治医チームをはじめ多職種と連携して、提供しています。
 
 
代替文字
原納先生
緩和支持治療科で研修をするとどんなことができるようになりますか?
 
代替文字
山口先生
疼痛に対する鎮痛薬など、各種症状に対する症状緩和のための薬物治療に関する知識はもちろんですが、より適切な症状緩和のために薬物以外の方法、例えば手術や放射線治療、IVRなどが適応となる場合があるので、それら周辺の治療手段の知識も得られます。また、症状緩和や意思決定・療養調整などは、原疾患治療と無関係にはできないため、いろいろな疾患の経過を広い視野でみるという視点は得られると思います。
 
 
代替文字
原納先生
 緩和ケアって大事だと思うけど、治療もできない、死にゆく患者さんに向き合うのって、疲弊してしまいそう、というイメージがありそう。やりがいや面白さ、先生のように長く続けられる理由はなんですか?
 
代替文字
山口先生
「治療(治癒)できない」「死にゆく」という事でいうと、腎不全・心不全・肝硬変などは臓器移植を行わない限り治ることはありませんし、いずれはその結果死を迎えることになります。直接的に亡くなることは少なくても、例えば糖尿病も根本的に治ることは難しく、脳卒中や外傷でも治療しても幾分か後遺症が残ることは多く、本当の意味で元通りになることはむしろ少ないと思います。そのような中で、自分が医師という立場で患者さんやご家族がより良く過ごせるためにできることを考え、自分の知識と技術をできる限り還元しようとしているだけ、という立ち位置でいます。むしろ主治医の先生たちが(極端に言うと)「自分たちでできることがない」と相談されてくるわけで、それに対して自身の医師としての知識・技術を駆使して、少しでも患者さんやご家族のより良い生活につながるのであれば、やりがいがないわけがないですし、むしろ“医者冥利に尽きる”と思うので、それで疲弊することも、自分はないですね。
 
代替文字
原納先生
医局メンバーの前後のキャリアパス、雰囲気を教えてください。
 
代替文字
山口先生
神戸大 緩和ケアグループの内科系(特に総合内科)やプライマリケアのバックグランドを持っているメンバーが多いですが、外科・小児科・麻酔科・救急などその他の領域でキャリアを積む中で緩和ケアの必要性を感じて緩和ケアの専門研修に入っている先生も多くいらっしゃいます。
 緩和ケアの専門性が発揮される主なセッティングとしては、緩和ケア病棟・緩和ケアチーム(院内コンサルタント)・在宅診療の3つが挙げれらます。専門医取得後は、それらのセッティングで院内や地域と繋がり協力しながら、臨床・教育を通じて緩和ケアを患者さんに届ける役割を担っており、基幹病院の緩和ケア病棟のスタッフ、小児のナショナルセンターの緩和ケア部門の責任者、専門的緩和ケアを提供する診療所の開設など、研修後のキャリアは多岐にわたります。
 目下、神戸大の緩和ケアグループは7割が女性で、小さいお子さんがいる先生が半数を占めています。産後復帰して専門医取得や学位取得などキャリア形成と業務も頑張って力になってもらっています。その他のスタッフも子育て中のスタッフをとてもカバーしてくれており、感謝です。
 
 
代替文字
原納先生
最後に研修医や学生にメッセージをお願いします!
 
代替文字
山口先生
緩和ケアは、疾患の種類や時期に関わらず、患者さんやご家族が抱える苦痛に対して医学的手段だけでなくケアや社会リソースも駆使して対応します。最近は、学生・初期研修の時期から緩和ケアに興味を持つ方も増えてきていますが、いずれにしても緩和ケアは多種多様の疾患、とくに重症の患者さんに対応することが多いので、それらに対応できる“基礎力”はとても重要です。ですので、初期研修の期間(ほんとは、学生の実習中から!)は目の前の患者さんに一生懸命対応して、一つでも多くの知識・経験を“採り” に行って、その基礎力を養ってください!
神戸大 緩和ケアグループは、まだまだマンパワーが不足しており、院内・地域・社会からのニーズの大きさに十分対応できていない部分が多々ありますが、もっと仲間が増え、地域のニードに応えることとメンバーのライフプランとキャリアプランが無理なく共生できるようなグループにもっともっとなっていけばいいな、と思っています。ぜひ興味がある方はコンタクトください!



 
  

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