肥満症治療センターについて
2025年4月より、神戸大学医学部附属病院「肥満症治療センター」を新たに開設しました。
本センターでは、多診療科・多職種の専門医療チームが連携し、最新の科学的知見に基づいた肥満症治療を提供します。
外来での治療のみならず、入院治療も行っており、食事療法、運動療法、行動療法といった基本的な肥満症治療に加え、薬物療法、外科療法、さらには新たな肥満症治療薬の治験や臨床研究への参加なども含め、肥満症をお持ちの方々に最適な治療法を提案します。
肥満症とは
「肥満」とは、脂肪が過剰に蓄積した状態で、BMI(体格指数)が25 kg/m²以上の状態を指します。
ただし、この段階では必ずしも病気と診断されるわけではありません。体型上は肥満であっても糖尿病や脂質異常症といった代謝系の疾患や心疾患などの循環器系の疾患など、肥満に関連する疾患が認められない方もいらっしゃいます。
一方、「肥満症」は、肥満に加えて医学的に治療が必要な健康障害を合併した状態を指す疾患概念です。
具体的には、BMI 25 kg/m²以上で以下に示す11の健康障害のいずれかを伴う場合に「肥満症」と診断されます。
また、内臓脂肪が著しく多く、将来これらの障害を発症するリスクが高い場合も肥満症の対象となります。
さらに、BMI 35 kg/m²以上で健康障害を合併する場合には「高度肥満症」と診断されます。
肥満症は単なる体型の問題ではなく、放置すると糖尿病や心血管疾患など生命予後に関わる病態へ進展する恐れがあります。
そのため、減量を中心とした医学的介入(食事療法、運動療法、行動療法、薬物療法、外科療法)が必要となります。
当センターでは、専門チームが科学的根拠に基づき、患者さん一人ひとりのライフスタイルに合わせた最適な治療を提供しています。
肥満症の治療
当センターでは 多診療科・多職種が連携し、科学的根拠に基づく治療を提供しています。
肥満症の最終的な治療目標は「健康障害を改善し、QOL(生活の質)を高めること」にあります。
肥満症の治療では、食事療法・運動療法に加えて、行動療法が治療の基礎となります。
内科的治療
食事療法

当院の肥満症治療の経験豊富な管理栄養士が栄養指導を担当します。
運動療法

医師から継続可能な有酸素運動や筋力トレーニングに関して提案を行います。
行動療法

グラフ化体重日記や食行動質問票、30回咀嚼法などを用いて内科部門の医師が担当します。
肥満症(BMI 25 kg/m²以上、35 kg/m²未満)の治療では、3~6ヵ月で現体重から3%の減量を目標とし、高度肥満症(BMI 35 kg/m²以上)では、3~6ヵ月で5~10%の減量を目標として設定します。
さらにそれぞれの減量目標を達成した場合でも、合併する健康障害の状況を踏まえて目標の再設定を行い、治療を継続していきます。
内科部門では、外来での加療に加えて、必要に応じて入院での肥満症の検査や治療も行っています。
外科療法
内科的治療で目標が達成できず減量効果が不十分である場合には、外科療法や薬物療法の適応について考慮します。
外科療法に関しては、腹腔鏡下スリーブ状胃切除術などの減量・代謝改善手術も、保険診療の範囲内で行っています。
肥満症に対する外科療法は近年、日本国内でも急速に普及してきており、内科的治療で十分な効果が得られなかった人に対しても高い減量効果が期待でき、肥満症治療の新たな選択肢を提供します。
外科療法は多職種と連携しながら、外科部門が担当します。
肥満症の薬物療法
近年、肥満症治療は飛躍的な進歩を遂げています。2024年には持続性GLP-1 受容体作動薬のセマグルチド(商品名ウゴービ®)が発売されました。
さらに、2025年には持続性GIP/GLP-1 受容体作動薬であるチルゼパチド(商品名ゼップバウンド®)が発売されました。
これらの薬剤は食欲を低下させることにより大幅な減量が期待でき、食事療法・運動療法を継続しながら使用することで、減量効果を高めることが可能です。
肥満症治療薬に関しては、厚生労働省により作成された「最適使用推進ガイドライン」に則り使用することが求められています。
さらに、日本肥満学会からも「肥満症治療薬の安全・適正使用に関するステートメント」が公開されています。
当センターでは、これらのガイドライン・ステートメントに則り、薬物療法を適切に活用し、個々の患者さんに適した治療を行っています。
| 一般名 | 商品名 | 作用 | 連続使用上限 |
|---|---|---|---|
| セマグルチド | ウゴービ® | 週1回皮下注射 <GLP-1受容体作動薬> |
68週 |
| チルゼパチド | ゼップバウンド® | 週1回皮下注射 <GIP/GLP-1受容体作動薬> |
72週 |
肥満症に対して使用できる薬剤であるセマグルチド(商品名ウゴービ®)とチルゼパチド(商品名ゼップバウンド®)を使用できるのは、専門の施設基準を満たす医療機関に限られ、当院は施設基準を満たしています。
肥満症治療薬を開始する前には、肥満症治療薬を投与する施設において適切な食事療法・運動療法を6ヵ月以上継続し、専門の医師の判断に基づき肥満症治療薬を開始します。食事療法については、この間に2ヵ月に1回以上の頻度で管理栄養士による栄養指導を受ける必要があります。投与量は少量から始め、基本的に4週ごとに段階的に増量します。また、肥満症治療薬開始後も継続した個別栄養指導の継続が必要となります。
ウゴービ®・ゼップバウンド®は、連続使用期間が定められており、ウゴービでは最大68週、ゼップバウンドは最大72週までと定められています。最大使用期間を使用しても減量が不十分であった場合には、再度6ヵ月間の栄養指導を継続した後に再使用することは可能です。
受診を希望される方へ
肥満症治療センターの受診には予約が必要です。
肥満症治療センターの受診をご希望の場合は、主治医もしくはかかりつけ医からご予約をお願いします。
医療従事者の方へ
患者様を肥満症治療センターにご紹介いただく際は、次の点にご注意ください。
肥満症治療薬を開始する前の個別栄養指導は、導入施設で行う必要があります。
自施設で継続して栄養指導を行っていた場合でも、紹介後に当院で6ヵ月間の個別栄養指導が必要であることをご注意ください。
肥満症治療薬での治療期間中には、合併している高血圧、脂質異常症又は2型糖尿病に対しての薬物療法を「当院において」行う必要があります。
また、ご紹介の際には、肥満症治療薬の適応にかかわる、身長、体重、BMI、肥満関連健康障害の情報の提供をお願いいたします。
内科部門は糖尿病・内分泌内科 減量外来へ、外科部門は食道胃腸外科 減量外来へご紹介ください。