第18回 緩和支持治療科

Interviewee 木澤 義之 神戸大学医学部附属病院緩和支持治療科 特命教授

 

経歴
1991年 筑波大学医学専門学群卒業。
1991年 医療法人財団 河北総合病院 内科研修医
1994年 筑波大学総合医コースレジデント
1997年 国立がんセンター東病院研修医(緩和ケア病棟)
1998年 筑波メディカルセンター病院医師(総合診療科、緩和ケア病棟担当医師)
2003年 筑波大学臨床医学系講師
2013年 神戸大学大学院医学研究科内科系講座先端緩和医療学分野特命教授
専門医資格等
日本内科学会 総合内科専門医、日本緩和医療学会専門医
2018年〜特定非営利活動法人日本緩和医療学会理事長

 

Interviewer   伊藤 まどか 神戸大学医学部附属病院緩和支持治療科 医員

 

 

経歴
2013年 徳島大学医学部卒業
2013年 社会保険京都病院 研修医
2014年 地域医療機能推進機構京都鞍馬口医療センター(経営統合により)研修医
2015年 明石医療センター後期研修医
2017年 兵庫県立加古川医療センター緩和ケア内科後期研修医
2018年 清水メディカルクリニック専攻医
2019年 神戸大学医学部附属病院緩和支持治療科医員(現職)

 

専門医資格等
医師会認定産業医
日本プライマリ・ケア連合学会プライマリ・ケア専門医

緩和支持治療科ってどんなところ?

 

緩和支持治療科ってあんまり聞いたことないですけど、どんな診療科ですか?

そうですよね、そう思っても無理はないと思います。緩和支持治療科は緩和ケアと支持治療を専門とする診療科です。日本でこの名前がついている診療科は数少ないと思います。
生命の危機にある、重篤な疾患を持つ患者さんとそのご家族のQOL(Quality of Life)、ならびにQOD(Quality of Death and Dying)の向上を目指した医療を実践しています。
現代の医学の進歩により、多くの病気のメカニズムが解明され、健康寿命が伸びています。しかしながら、不老不死をサポートする薬や手法は開発されておらず、好むと好まざるとにかかわらずヒトは100%死亡します。緩和ケアの専門性は、治ることが難しい病気を持つ患者さんに対して、その治療と並行して、つらい症状や気持ちのつらさに対応し、できる限り充実した生活を送ることができるように支援していくことです。結果としてこれが、ヒトの死にゆく過程を支援することに繋がります。

緩和ケアって、結局痛みの治療をしているところなんじゃないんですか?

その質問も、よく聞かれます。さっきお話したように、緩和ケアの専門性は重篤な疾患を持つ患者さんのQOLとQODの向上にあります。そのひとつとして重要なのが、症状緩和になります。痛みを始めとするつらい症状があると、快適に過ごすことは難しくなりますので、痛みの緩和は緩和ケアにとって非常に重要な臨床・研究の分野になります。その他、呼吸困難や嘔気・嘔吐、倦怠感、不安、抑うつ、不眠、せん妄などの症状の緩和に対する技術を身につける必要があります。また、つらい状況にある患者さんとご家族の希望を支えながらどのようにコミュニケーションをしていくか、についても力をつけていく必要があります。これらのコミュニケーションを取る力も専門性のひとつです。

患者の生活を支えるというけど、どういうことをするんですか?

私達大学にいる医師は、大学病院での医療をデフォルトに考えがちですが、患者さんの生活に目を向けると、入院生活や外来など大きな病院で過ごす時間は、生活のうちのほんの一瞬に過ぎないわけです。治癒が難しい重篤な病気を持って生きることを医療の面から支えるためには、急性期医療のモデル(=大病院のモデル)では対応できません。私達大学病院の医師は、病院内での医療だけを一所懸命向上させようと努力していますが、退院した途端に医療の質が落ちたり、継続性が途絶えたりします。これはケアの断片化(フラグメンテーション)と呼ばれ、患者さんやご家族は自宅に帰ったときに大変な思いをされ、中には再入院を余儀なくされる場合もあります。緩和ケアでは、「いつでも、どこでも、途切れることがない」ケアを目指しています。従って、その患者さんが今後どのような経過をたどるかを俯瞰して見て、今後のケアのコーディネーションをしていくことが必要な能力になります。そのため、緩和支持治療科の後期研修では、初期に総合内科もしくは総合診療科の研修を義務付けており、その後「ホスピス・緩和ケア病棟」で半年以上、「在宅緩和ケア」で半年以上、「緩和ケアチーム」で半年以上の研修を義務付けており、幅広い臨床能力を身につけるとともに、在宅ケアや地域医療について熟知し、コーディネーションできる能力を身に着けます。(世界標準のカリキュラムを採用しています)

現在後期研修医・大学院生は何人いますか?

現在は、後期研修医が2名ホスピス・緩和ケア病棟で、1名が緩和ケアチームで研修中です。また、大学院生が現在4名在籍しており、研究と臨床活動に励んでいます。

研修の特徴を教えて下さい。

前述したとおり、バラエティに富んだ研修環境で、地域で緩和ケアを実践できる医師を養成しています。具体的なキャリアパスとしては4つあります。1)地域のホスピス・緩和ケア病棟で働く医師、2)基幹病院の緩和ケアチームで働く医師、3)在宅や小規模病院で緩和ケアを実践する医師、4)緩和ケアの教育と研究を実践する医師、この全てをサポートしたいと思っています。緩和ケア医の需要は非常に高く引く手あまたですので、ぜひ御検討ください。後期研修で取得する資格は、総合診療専門医もしくは内科専門医と日本緩和医療学会専門医になります。

診療科と医局の雰囲気を教えて下さい

Easy come, Easy goな感じです。研修についても指導医が個人の事情に合わせてオリジナルのカリキュラムを作っていますので、どうぞ気軽に相談してください。

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