リハビリテーション科・医療技術室 リハビリテーション部門 Rehabilitation Medicine
前十字靱帯(ACL)損傷後のリハビリテーション
前十字靱帯(ACL)は大腿骨と脛骨を繋いでおり、脛骨が前にずれる動きや外に捻る動き(外反)を制動しています。前十字靱帯損傷はジャンプの着地や切り返しの際に膝がknee in(膝が内にねじれる)することで、他のプレーヤーと接触しないにもかかわらず損傷することが多いとされています。
女性に多い損傷であり、バスケットボールなどでは、男性に比べて5~7倍の損傷頻度と言われています。一度損傷すると保存的に(手術をしないで)治る可能性は低く、損傷したままスポーツを続けるのは困難です。手術はスポーツ復帰を目的として、関節鏡視下に靭帯を再建します。当院では、多くの症例に解剖学的二重束前十字靭帯再建 (Double-bundle ACL reconstruction)を行っています。スポーツ復帰は約9ヶ月で、入院期間の目安は2週間程度(※)で、松葉杖を使用し退院となることがほとんどです。
手術後のリハビリテーションは、出来る限り早期に膝関節の可動域を改善し、膝関節周囲の筋力を回復させることが重要です。しかし、早期の過度な可動域練習や筋力トレーニングは、骨に空けた穴と再建靱帯の癒合や再建靱帯自体の再生を阻害し、不安定性が残存してしまう恐れがあります。当院ではそういった危険性を考慮しながら安全に術後早期からリハビリテーションを進めていきます。
※ 半月板の縫合を同時に実施している場合は、1週間程度遅れる場合あり
リハビリテーションプロトコール
術前日(入院日)
手術の前日に入院となります。入院後、担当理学療法士が手術前に膝関節の状態、不安定性、可動域、筋力等をチェックします。また義肢装具士により装具の採寸を実施します。(外来にて採寸している場合はなし)



術翌日~術後2日
医師の回診後より、膝の炎症を抑えるため、アイシング用の器具が開始となります。また、血栓予防のため、ベッド上では積極的に足関節を動かすようにしてください。


術後3日
リハビリテーションが開始となります。車椅子でリハビリ室に移動し、膝関節周りのマッサージや可動域練習(※)、筋力トレーニング、1/3荷重練習(※)を開始します。入院中の関節可動域の目標は伸び(伸展)が0°、曲げ(屈曲)が90°となります。松葉杖が安全に使えるようになれば、病棟でも松葉杖で使用し移動出来るようになります。歩行する際はACL装具を装着しましょう(術後2ヶ月間装着)。術後のリハビリは基本、午前・午後2回実施します。リハビリを実施しやすくするために、半ズボンの着用を推奨しています。






術後1週
1/2荷重が開始となります。※半月板縫合を同時に実施した場合は、術後7日より1/3荷重、可動域練習が開始となる場合があります。直立姿勢がとれるようになり、踵上げ練習や不安定板上での立位練習が開始となります。


術後2週
全荷重が開始となります(※)。術側の下肢に全体重かけれるようになりますが、術後2週以内に退院される場合、ほとんどの方は松葉杖を使用し退院されます。当院では松葉杖の貸し出しを行っていないため、業者を介しての貸し出しとなります(1ヶ月約900円)。片脚立ち練習やうつ伏せでのレッグカール、チューブを用いたレッグエクステンション、浅いスクワットが開始となります。退院後は基本的に、ご自宅近くのリハビリ先で、継続的なリハビリを実施していただくことになりますが、希望があれば当院での外来リハビリテーションも対応可能です。気軽にご相談ください。




※半月板の縫合を同時に実施している場合は、1週間程度遅れる場合あり。