Clostridium difficile関連下痢症(CDAD)

  2010年06月01日

Clostridium difficileは抗菌薬関連下痢症の原因として知られている。抗菌薬の使用に伴う下痢の20~30%、腸炎の50~75%、更には偽膜性腸炎の90%は本菌によるとされ、抗菌薬投与中もしくは投与終了後10週以内に多い。しばしばアウトブレイクの原因ともなり、感染管理上も重要である。C.difficile関連腸炎(CDAD)の治療薬であるバンコマイシン散の多用は、バンコマイシン耐性腸球菌の出現のリスクとなることが懸念されている。

1. 臨床症状

1日20回以上の下痢を伴うような重症例もあるが、下痢を伴わない場合や、治療なしでも1日数回程度の下痢が数日で軽快することも多い。下痢以外の症状としては、発熱(30-50%)、白血球増多(50-60%)、腹痛(20-33%)などがある。時に中毒性巨大結腸を併発、穿孔し腹膜炎を合併することがある。

2. 診断

以下の2つに該当する下痢症を診た場合は、CDADを鑑別に挙げ、C.ディフシール抗原検査(注)を提出し、適切な感染予防策を開始することが推奨される。

C.ディフシール抗原検査は、感度が低い(63-99%)ため、続けて2回提出することを推奨される。感染対策(接触予防策)は、CDADが否定されるまで継続することが望ましい。
(注)電子カルテ上の表記はC.ディフシール抗原となっているが、実際には、CD toxin A,BをIC法で検査している。

3. 治療

  1. 無症候性の保菌者には、治療を推奨しない。
  2. 下痢を伴う症例には、適切な水分と電解質の補給が必要である
  3. CDADの患者、もしくは疑われる患者では、使用中の抗菌薬を一旦中止することが望ましい。
    この対応のみで、20-25%は症状が改善する。
  4. 軽症例では、メトロニダゾールが第一選択となる。
  5. 重症例(注1)、メトロニダゾール不応例(注2)、不耐例(注3)、2回目以降の再発例に対しては バンコマイシンが選択される。
  6. 20%程度の症例で再発するが、1回目の再発まではメトロニダゾールが選択される。
(注1)1日10回以上の下痢、末梢血白血球数 15,000/μl以上、もしくは強い腹痛を伴う症例を重症例とする
(注2)治療開始後2,3日で症状の軽減が得られない症例
(注3)頭痛、眩暈、失神、不眠、昏迷中枢神経障害を疑う症状、末梢神経障害が出現した場合は速やかに使用を中止する。吐き気、嘔吐、食欲不振等の消化器症状が出現した場合などでも、症状に応じて継続か中止かを判断する。

[投与方法の例]

第1選択

メトロニダゾール(250mg) 2錠  1日3回   10-14日間

薬価
 1錠(250mg) 37.3円 
第2選択 バンコマイシン散(内服) 500mg 分4 10-14日間 薬価 
 1瓶(500mg) 3244.8円

参考文献

 Mandell GL., Bennett JE.et al. Principles and practice of infectious diseases 7th edition Gerding N. et.al. Treatment of clostridium difficile infection. CID 2008;46(S1):S32-S42

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