あいさつ
神戸大学病院に、てんかんセンターが開設されて、
2年が経過しました。
てんかんは、てんかん発作を繰り返す脳の病気で、脳の神経細胞(ニューロン)が突然激しい電気的興奮を起こすことで生じます。てんかん発作は突然意識を失って反応がなくなったり、無意識に奇妙な行動をとったり、手足が痙攣したり、胸の不快感が生じたり、その原因や症状は人により様々です。乳幼児から高齢者までどの年齢層でも発病する可能性がありますが、3歳以下が最も多く、成人になると減り、60歳を超えた高齢者では脳血管障害などが原因となり再び発症が増加します。人口100人に対し約1人が発症するとも言われ、誰もがかかる可能性のあるありふれた病気のひとつです。しかし、ありふれた病気にも関わらず、社会的にはあまり認知されていないのが現状です。
てんかんは、適切な抗てんかん薬を服用することで、60~70%の患者さんでは発作は抑制され、通常の社会生活を支障なく送れると言われています。また、薬が効かない(薬剤抵抗性の)方には、脳神経外科手術やデバイス(機器)で治療する選択肢もあります。
神戸大学医学部附属病院は、国の「てんかん地域診療連携体制整備事業」に基づき、兵庫県から「てんかん支援拠点病院」に指定されました。これを受けて、令和4年5月にてんかんセンターを開設しました。開設から2年が経過しましたが、これまでてんかんの治療だけでなく、市民への啓蒙活動や研修会、相談窓口での電話相談など、様々な活動を行ってまいりました。
てんかんの治療は、プライマリケアができる一次診療施設から高度専門医療が可能な3次診療施設まで、連携して地域で診療に当たることが必要です。当院は3次診療施設として、脳神経内科、脳神経外科、小児科、精神科神経科などの診療科や生理検査部、リハビリテーション部など、多職種横断的にてんかん診療を行っています。兵庫県の「てんかん診療の最後の砦」として、様々なてんかん患者の診断、治療を行い、薬剤抵抗性で難治な患者さんに対しても、外科的治療を含め適切に対応します。てんかんに関する悩みや疑問、どこに相談すればよいのか分からない等お困りのことがありましたら、専門医が対応しておりますので、どうぞ本センターをご活用ください。
- てんかんセンター長
- 篠山 隆司
てんかんセンター概略
我が国のてんかん診療は精神科、小児科、脳神経内科、脳神経外科など複数の診療科が担っており、てんかんの専門診療を行う医療機関がプライマリケア医や二次医療機関から把握されず、情報提供・教育の体制が整備されない状況がありました。このような状況を打破するために、地域内の病診連携、診療科横断的な包括診療をめざし、平成27年からモデル事業、平成30年から本事業として、厚生労働省のてんかん地域診療連携体制整備事業が始まりました。各都道府県に1か所ずつ「てんかん支援拠点病院」(上図)を設置し、専門的な相談支援、管内の医療機関・自治体等や患者・家族との連携を図り、てんかん診療や相談支援等に携わる医師に対する助言・指導や地域における普及啓発等をはかることを目的としています。このような制度のもと、兵庫県でも令和4年5月1日より神戸大学医学部附属病院てんかんセンターが開設されました。また、てんかん地域診療連携体制整備事業において兵庫県のてんかん支援拠点病院の指定を受けました。
当センターでは、
- てんかん診断やてんかん外科術前評価の中核検査である長時間ビデオ脳波モニタリング検査(※1)の施行
- 最新の各種検査機器(※2)を駆使した包括的な診断と内科・外科治療(抗てんかん薬調整・てんかん外科手術)の実践
- 相談支援業務とてんかん患者と家族・医療従事者・関係機関職員に対する研修の実施
を通じて、世界水準のてんかん診療と患者支援を推進してまいります。
兵庫県の「てんかん診療の最後の砦」として、初発の発作、診断に苦慮する患者さんから、薬剤調整や薬剤抵抗性でてんかん外科手術が望まれる患者さんまで幅広く対応しますので、いつでもご活用いただければ幸いです。
- 註※1 専用の個室でビデオと脳波を同時に長時間(24時間以上)記録し、発作間欠期のてんかん波や発作時の発作症状や脳波変化を記録する検査です。 的確なてんかんの診断や、薬剤抵抗性(難治)てんかんの外科手術の術前評価にかかせない中核検査です。
- 註※2 外来脳波検査、長時間ビデオ脳波モニタリング検査、CT、3TMRI(含む術中MRI)、PET-MRI、SPECT、各種神経心理検査など、診断から術前評価まで世界水準の検査機器で対応します。
メンバー
てんかんセンター運営委員会メンバー
上段左から下段右の順に、藤本陽介助教(脳神経外科)、的場健人助教(脳神経内科)、山口宏特命講師(小児科)、大野遥香特定臨床検査技師(医療技術部・臨床検査部門)、西岡仁美特定言語聴覚士(医療技術部リハビリ・歯科部門)神田友規看護師長(9南病棟)、尾谷真弓助教(脳神経内科)、篠山隆司教授(脳神経外科)、永瀬裕朗特命教授(小児科)、木村敦講師(精神科神経科)
月 | 火 | 水 | 木 | 金 | |
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脳神経内科 | 尾谷 | 的場、尾谷 | 的場 | 木村、甲田 | 橋本 |
脳神経外科 | 篠山、藤本 | 篠山 | |||
小児科 | 永瀬 | 徳元、老川 | 永瀬、山口 | ||
精神科神経科 | 岡﨑、大塚、毛利 | 木村 |
脳神経内科: 長時間ビデオ脳波モニタリング検査、てんかん診療の相談支援・助言指導、内科治療
脳神経外科: 頭蓋内電極留置による焦点部位解析、てんかん外科手術 (てんかん焦点切除術や脳梁離断術、迷走神経刺激療法など)
小児科: 長時間ビデオ脳波モニタリング検査、遺伝子検査、内科治療
精神科神経科:てんかん患者の精神症状の評価・治療
外来受診の仕方
- 当院のてんかん外来は完全予約制となっております。
- かかりつけ医の先生に、紹介状を用意していただいてください。紹介予約申込書にご希望の診療科を明記のうえ、傷病名や備考の欄に「てんかん外来希望」と記載していただければ、地域医療連携室にて、ご希望の診療科のてんかん外来受診を調整いたします。