研究者の方へ Resercher

「ニーズ共創型」のバイオリソース提供

目利きの力

私たちバイオリソースセンターでは、2019年の発足以来、多くの利用者様と患者検体とそれに紐づく診療情報を用いた臨床研究を実施してきました。ご相談を頂いた研究者のアイデアや想いを受け止め、一緒になって研究計画を作りあげ、研究成果の創出に取り組んできました。
私たちのチームには医師をはじめ、臨床検査技師、薬剤師や看護師など様々なバックグラウンドを持つメンバーがそろっています。その目利きの力を結集して全力で研究の推進をサポートさせて頂きます。

下記のようなお悩みをお持ちの方、ご相談をお待ちしています。

  • 特殊な状態の腫瘍検体を研究に利活用したい。
     例)生細胞状態の腫瘍細胞
     例)癌細胞を微量しか含まない早期検体
  • 新鮮な凍結組織を入手したい
  • 暗黙知が欲しい
  • 大学の研究者の意見が聞きたい
  • 臨床医の意見、臨床ニーズが聞きたい
  • 試料採取後に即座に〇〇処理をしておいてほしい

目利きによるバイオリソース設計、研究支援の事例

バイオリソース収集にあたって重要なポイントは「研究計画の成熟度」です。研究のアイディアは素晴らしくても、その計画に至るまでのディスカッション、検体収集可能性、コスト(時間、困難さ、金額)と得られるメリットのアンバランスなどから、研究をあきらめたり、継続できなかったりすることが、多くあります。適切な研究計画に昇華させ、研究者が安心して研究成果に結実させられるシナリオを設計することは、革新的な研究アイディアであるほど、困難を超えて実現するべきものです。

私たちバイオリソースセンターは、神戸大学という学術的なバックグラウンドを持つことを武器に、成熟した研究計画のみならず、やや未熟なアイディア段階のものでも、医療の進化に役立つ革新的な種があれば、コンサルティングを行っています。その際、専門の診療科も参加し、積極的にかかわってきました。

対象の疾患や検証するべき範囲を適切に設定する必要がありますが、その際に、検査法や治療法になった際に使用する臨床医の観点、検体を収集する技師の観点だけでなく、その研究の社会貢献性や価値を検討しなければなりません。 研究が、研究倫理を適切に担保しながらも、革新的な検査や治療となるように想定しながら、バイオリソース収集の設計を行っています。

CASE① 従来の1000倍感度を持つ新検査法の性能評価をしたい。
⇒従来法ではキャッチできない段階のバイオリソースの出現タイミングを推定して研究対象に

課題:
従来の1000倍の感度を持つ新しい手法を開発。しかし臨床現場にはその感度の検査方法がないため、その感度を証明するバイオリソースが取得できない。
解決策:
現存の検査では検知できない高感度(微小病変)で疾患を発見できるため、リアルな臨床検体で検証できれば、該当の疾患の早期発見が可能になる。現在法で疾患が発見された患者さんがそこに至るまでのストーリーを逆算する。
対応:
疾患の進行パターンを予測し、その条件の段階が現れる可能性がある患者さんの経過を観察。条件に合致するタイミングを見計らう

CASE② 希少疾患で侵襲性も高いため、バイオリソースの研究利用は困難。
⇒学術研究として臨床医とともに共同研究を実施する

課題:
希少疾患である、侵襲度が高い、高い時間精度や研究に特異的な検体処理が要求される場合など、一般的にバイオリソース収集が非常に困難であり、バンク型では対応が難しい
解決策:
学術研究として注目し、研究対象としたいと考えている臨床医とマッチング、臨床現場で診療とバイオリソース収集を一体で行う。
対応:
院内外を丹念に調査し、診療科医師とも相談、条件に合致するバイオリソースの収集法を提案。アカデミアとの共同研究として立ち上げ、倫理委員会承認を得て、研究倫理を十分に担保して研究を実施する

CASE③ 抗腫瘍細胞抗体の殺細胞効果を評価したいが検体入手が困難
⇒採取、搬送、解析をスムーズに行い、生細胞率を上げる

課題:
目的は殺細胞効果の評価であり、解析環境は東京のラボでしか準備できないため、搬送時間、環境により、さらに生細胞率が下がる。
解決策:
細胞が生きた状態を保てる保存状態、時間を逆算して解析準備、搬送を連携して行う。
対応:
細胞傷害能の検証に耐えられる、生細胞状態での腫瘍細胞サンプリングを実施し、提供。さらに研究の必要性に応じて、生細胞率を上げるために、凍結ステップを排除することとし、採取時刻+配送時間(神戸→東京)を考慮したうえで解析準備を東京で行い、研究者は移送直後の未凍結の生きた状態の腫瘍細胞に抗体を添加して、細胞傷害能の検証をファイナライズできた。

CASE④ テクノロジードリブン開発。対象疾患や検証範囲が明確でない
⇒臨床医のニーズとアドバイスで、効果的な臨床共同研究へ昇華

課題:
テクノロジードリブンで作られた診断薬で、汎用性はあるが、臨床現場に詳しくないため、臨床で効果の上がる対象疾患や、検証するべき範囲を絞れていない
解決策:
診断薬の疾患への有用性とともに、一般社団法人BRIH-Kにて、社会貢献性をアドバイス。
対応:
臨床医目線で有用性の高い疾患と対象範囲を特定、技師目線での検体収集可能性を検討、ビジネス目線での診断薬の優位性を加味して臨床研究計画書の作成を支援し、バイオリソースを提供。

検体収集のプロセス

研究者のニーズのヒアリングの結果を基に、実施計画について検討・提案をさせて頂き、研究計画書作成や煩雑な手続きが必要となる倫理審査委員会の承認取得等のサポートも行っています。また研究開始後も必要なタイミングでディスカッションを行って計画の軌道修正をするなど、コンサルテーション機能をもつ唯一無二のバイオリソースセンターが研究完了までを丁寧にサポートいたします。

検体収集、管理システム

検体の収集管理においては、温度管理情報やタイムスタンプのみならず、検査値、薬歴等が細かく残されており、倫理委員会での承認に基づいて、共同研究としてバイオリソースを利活用可能です。 検体提供のみの場合は、ほとんどのケースで大学側が知財を求めずに検体提供しています。