対象となる患者さん

抗てんかん薬による内科治療でてんかん発作が十分に抑制されない場合(難治性てんかん)は、外科治療(手術)で発作が消失/緩和される可能性があります。

当院では、てんかんセンター所属の各診療科の専門医師(脳神経内科、小児科、精神科、脳神経外科)で難治性てんかんの患者さんのてんかんの病態(てんかん焦点の部位、てんかん活動の拡がり/ネットワーク)や外科治療の適応について協議し、治療方針を決定しています。

外科治療の術前検査

てんかんの病態(てんかん焦点の部位、てんかん活動の拡がり/ネットワーク)を各種検査で評価します。

非侵襲的検査

発作症候による評価、神経心理・高次脳機能検査、頭皮脳波、長時間ビデオ脳波モニタリング(入院検査)、頭部画像(CT/MRI)、脳血流・代謝画像(PET-MRI、SPECT)

  • ※脳磁図については他院へ紹介して検査を依頼します。
    (検査の内容については、てんかんの診断で行う検査の項目を参照ください)

侵襲的検査

頭蓋内電極留置術/慢性頭蓋内脳波検査:全身麻酔下に開頭手術を行い、脳表電極/深部電極を留置します。術後に約1〜2週間かけて病棟で長時間ビデオ脳波モニタリングの検査を行い、発作時と発作がないとき(発作間欠期)のてんかん活動を詳細に記録します。重要な脳機能(運動/感覚/言語/視機能など)が存在する脳部位の近くにてんかん焦点・病変が存在する場合は、手術の際の脳機能の温存のために電気刺激などにより脳機能マッピング(機能を司る場所の地図の作成)を行います。

  • ※定位的頭蓋内電極留置術SEEGには現時点で対応していません。開頭手術を要さない低侵襲な検査でてんかんネットワークの評価に有用であり、将来的な導入を予定しています。

外科治療(手術)

  • 手術の目的は、てんかん発作の消失/緩和により生活の質を改善し、社会活動への制約をなくすことです。
  • 手術には、大きく分けて①発作の消失をめざす根治手術と、②発作の頻度や程度の改善をめざす緩和手術があります。
  • 患者さんのてんかん病態、身体/社会的状態に応じて、最適な手術内容を個別に検討します。
てんかんに対する外科治療一覧
  臨床的意識 切除 離断 刺激
根治手術

てんかん原性領域の
切除・離断

目標:発作消失

焦点切除術

  • 病変切除術
  • 脳皮質切除術
  • 前側頭葉切除術(ATL)
  • 選択的海馬扁桃体切除

離断術

  • 脳葉離断
  • 多葉離断
  • 半球離断
  • 中心部温存半球離断
 
緩和手術

てんかん活動の伝播遮断
多発病変の主病変切除

目標:発作頻度/程度の減少

  • 部分的病変切除
  • 軟膜下皮質多切術
  • 脳梁離断術
  • 海馬多切除
  • 迷走神経刺激術(VNS)

根治手術

  • 目的:てんかん発作の消失

てんかん焦点の切除、離断により発作の消失をめざす手術です。
術前評価として、慢性頭蓋内電極留置術が必要な場合があります。

術式
  • 焦点切除術
  • 離断術(脳葉離断、半球離断)

焦点切除術

焦点てんかんの患者さんで、てんかん焦点(てんかん発作の原因である部位)が各種検査結果から限局している場合は、てんかん焦点を切除することにより発作の消失が期待できます。特に、海馬硬化症などが原因で生じる側頭葉てんかんでは、海馬扁桃体切除術は発作消失効果が高いとされます。

離断術

てんかん焦点がある程度広い場合は、ほかの正常な脳にてんかん活動が拡がらないように脳内の神経線維を切り離して遮断します。

  • ※限局したてんかん焦点が判明しても、重要な脳機能の領域(運動/感覚/言語/視覚/記憶)に重なる場合は焦点切除が困難な場合があります。その場合は多切術(てんかん焦点の皮質や海馬に切り目を入れる)を行う場合があります。
  • ※術中神経モニタリング/マッピング/覚醒下手術
    手術の際は、重要な脳機能を温存し安全で有効な手術を実施できるように、術中神経モニタリング/マッピングや覚醒下手術(脳神経内科医師や臨床検査技師・リハビリテーション療法士と協力)、神経内視鏡支援手術などを必要に応じて実施します。

緩和手術

  • 目的:てんかん発作の頻度や程度の改善

根治手術の実施が困難な場合に、発作の頻度や程度の改善をめざす手術です。

術式
  • 脳梁離断
  • 迷走神経刺激術VNS

脳梁離断術

左右の大脳半球を繋ぐ線維である脳梁を切断します。両側大脳半球の過剰な同期活動の解除、片側の大脳半球から反対側へのてんかん活動の伝播の遮断のために行います。全身が脱力/緊張して倒れるような発作に特に有効です。

迷走神経刺激療法VNS

迷走神経を電気刺激することで発作の緩和をめざします。頸部の迷走神経に電極を巻きつけ、心臓のペースメーカーのように前胸部の皮下に刺激装置を埋込みます。直後から効果が期待できるものではなく、術後数年で約半数の患者さんで発作が半減するといわれています。

結節性硬化症

結節性硬化症はてんかんや脳室内腫瘍を合併することが多い疾患です。神戸大学医学部附属病院では、結節性硬化症の診療に関わる複数診療科がチーム(TSCボード)として連携しつつ各診療科で専門的に対応しています。詳しくは当院TSCボードのサイトをご参照ください。

脳神経外科では、上衣下巨細胞性星細胞腫(SEGA)やそれに伴う水頭症、皮質下結節に伴うてんかんに対応し、必要な場合には外科治療を行います。

てんかん外科 診療担当医

篠山 隆司 教授 外来担当曜日:火曜日 / 金曜日
藤本 陽介 助教 外来担当曜日:火曜日
迷走神経刺激療法VNS施行医

内科的治療について

てんかんの内科的治療については以下のページをご覧ください。

てんかんの内科的治療

https://www.hosp.kobe-u.ac.jp/epilepsy/naika_chiryo/