外来脳波検査

てんかん診断の最も基本となる検査です。頭皮上に電極を貼り付けて、脳が発する電気信号を検知・記録することで、脳の働き具合を測定します。てんかん = 脳が過剰な電気活動を起こす『性質』を持っているか、を調べることができます。
てんかん患者さんでは、発作が起きていないとき(発作間欠期)でも脳の過剰な電気活動(てんかん波)が出現します。また、てんかん波が脳の全体から出現しているか、あるいは脳の一部から発生しているか、を判別することで、患者さんに適した治療薬を選ぶ参考とすることができます。
通常1回あたり30分程度で終了しますが、当院では検査の感度(異常の見つかりやすさ)を高めるため、睡眠中を含め1時間程度測定する場合があります。

MRI検査

脳の形態を調べる検査です。生まれつき脳の小さな異常がないか、脳卒中や外傷(けが)、脳腫瘍、加齢に伴う脳の萎縮(いしゅく)など、てんかんの原因となる病変がないかを調べることができます。CT検査で検知できない軽微な異常を見落とさないよう、てんかん診断用に調整した撮像法で検査することが大切です。当院では、てんかんの原因となる病変の検出を高める専門的な撮像法でMRI撮影を行っています。

FDG-PET検査

脳の代謝を調べる検査です。脳のエネルギー源は糖分ですので、絶食して、放射線のラベルをした特殊なブドウ糖の注射をして、脳の代謝、すなわち脳の活動を反映する写真を撮ることができます。てんかん患者さんでは、てんかん発作の焦点(発作が広がる起点となった震源地)では過剰な電気活動のため脳の活動(機能)が低下します。そのためエネルギー代謝(糖代謝)が慢性的に低下し、ブドウ糖注射を用いたPET検査で、その部位を検知できることがあります。当院ではPET-CTに加え、PETとMRIを同時に撮影できる最新の機器(PET-MRI装置)も導入されています。

3テスラMRIとPET-MRI検査の例。MRI検査(左・中)で右側頭葉に生まれつきの良性脳腫瘍(神経節膠腫)が検出されています(黄色の丸)。PET-MRI検査(右)では、脳腫瘍とその周囲(赤丸で囲んだ箇所)が、てんかんの過剰な電気活動のため代謝(機能)が低下しています(青い色は代謝低下を示します)。長時間ビデオ脳波モニタリングの検査で過剰な電気活動が同部位から出現することが判明し、てんかん手術が可能となりました。

長時間ビデオ脳波モニタリング検査

てんかんの的確な診断や、外科手術の適応を評価するために有用な検査です。世界のてんかんセンターで標準的に行われ、本邦でも保険診療として認められています。当院脳神経内科では2020年11月から本格始動し、より安全に、世界水準の検査が実施可能となりました。

1. てんかんの的確な診断

外来の脳波検査で異常が見つからなくても、発作が起きているとき(発作時)の脳波を調べることで、てんかんと診断できることがあります。入院して24時間~数日間、脳波とビデオを同時に記録し続けることで、てんかん診断の確定や発作型の診断に役立てます。
① 発作が起こった際の患者さんの安全を確保するため、② 検査で多くの有用な情報を得るため、ご家族に付き添いをお願いすることがあります。
すでにてんかんで治療中の患者さんは、医師の指示で検査中にお薬を減量し、目的をもって発作を起こりやすくすることがあります。
発作が起きない場合でも、24時間を超える膨大な脳波データを解析することで、てんかんと関係する脳波の異常が見つかりやすくなります。例えば、高齢発症てんかんの患者さんは、てんかん発作のため『まばら』な物忘れなど認知症と間違われる症状を呈します。1泊2日の入院で長時間脳波を記録し、発作がないときの過剰な電気活動(てんかん波)を検知することで、お薬による治療にむすびつけます。

2. てんかんの術前評価

難治てんかんでは、てんかん焦点切除による根治術や、迷走神経刺激など緩和治療の適応となることがあります。発作時のビデオや脳波といった長時間ビデオ脳波モニタリング検査の解析結果を、脳神経外科を含む複数の診療科合同の毎月のカンファレンスで検討し、手術の適応を判定します。

発作時SPECT検査

てんかん発作の焦点(震源地)が不明な難治てんかんの患者さんでは、手術適応を調べるため発作の最中に核医学検査(脳血流シンチグラフィー:SPECT)を行うことがあります。お薬を減らした状態で検査室にて待機し、発作が起こり始めたところで検査薬を注射します。発作の最中は過剰な電気活動が生じている場所では血流が増えます。脳の血流の目印となるアイソトープが脳のどこに分布したかを撮像することで、発作の焦点がどこにあるかを判定します。

神経心理検査

てんかん患者さんは、てんかんの原因となる脳の病変があったり、慢性的にてんかん発作をくり返したりすることで、言語や記憶の能力が低下する場合があります。年齢に応じた発達や知能、記憶力など詳しいテストを30分以上かけて行います。検査の結果から、てんかん発作のために機能が低下した脳の部位を調べることができます。難治てんかんで手術を行う患者さんには、手術後の脳機能低下のリスクを評価するためにも大切な検査です。